抜け毛について
頭部の毛は外力から頭部を保護し、保温や紫外線から頭皮を守る働きをしています。 毛の伸びる長さは1日に0.3mm~0.5mmほどです。 毛髪は成長期→退行期→休止期→成長期という毛周期を繰り返しながら伸長、脱落をしており脱毛症などの疾患がなくても洗髪をする際などに抜けてきますが、 毎日洗髪する方で50~80本、2日に1回の洗髪だとその倍位は抜けることがあります。 お風呂の排水口に毛が沢山ありましたとご相談されることもよくありますが、心配ないことも多いです。
このような場合はご相談ください
- 5cm以下の短い毛が沢山抜ける
- 円型に抜けたところがある
- 頭頂部やおでこの生え際が薄くなる
脱毛症の種類と治療
女性型脱毛症
40~50代から閉経以後に多く見られる脱毛症で頭頂部が主に薄くなります。 初期の頃は頭頂部から前頭部にかけての分け目部分が薄くなり拡がってきて気づかれることがよくあります。 頭頂部が主に薄くなり、毛が細くなる(軟毛化)という症状が認められる方が多いですが側頭部や生え際の両サイドが後退する場合もあります。 お風呂の排水口に毛が沢山ありましたとご相談されることもよくありますが、正常な方でも1日50~80本からその2倍程度の抜け毛があることもありますので正常範囲の方も多いです。 徐々に進行すること、女性型脱毛症の脱毛パターンになっていること、うぶ毛化して細くなった毛髪が認められることが診断の基準となります。 甲状腺機能低下症や膠原病、貧血などの脱毛をきたすことのある疾患や薬剤性の脱毛、円形脱毛症などを除外する必要があります。トリコスコピーや採血などの検査をします。 外用剤や内服薬、成長因子などによる治療や光線療法などの各種治療をおこなっています。
男性型脱毛症(AGA)
思春期以降の男性に生ずる脱毛症で遺伝的素因がある場合が多く、前頭部と頭頂部の頭髪がうぶ毛状になり、次第に生え際が後退してなくなっていきます。 発症には男性ホルモンが関与しています。男性ホルモンであるテストステロンは 5α還元酵素により分解され、ジヒドロテストステロン(DHT)ができます。 ジヒドロテストステロンが毛包の受容体に結合すると毛母細胞の増殖を抑制するサイトカインなどが誘導されることにより、毛が細くミニチュア化すると考えられています。 フィナステリド、デュタステリド、ミノキシジルなどでの治療(保険外診療)を行います
円形脱毛症
円形の脱毛斑が突然現れる脱毛症で小児、成人ともにみられる疾患です。何らかの原因で自分の免疫システムが毛包を 攻撃するようになり脱毛がおこると考えられています。 単発の場合と多発する場合があり、頭髪以外にまゆや髭、腋毛、陰毛に脱毛がみられることがあります。 爪に点状のくぼみができたり、爪が黄色く濁りもろくなるなどの変化がみられることもあります。 自然治癒がみられる疾患ですが、小児の円形脱毛症、アトピー性皮膚炎の患者さんに起こった脱毛症や 全頭型など範囲が広い場合は治りにくい傾向があります。 ステロイド外用、局所注射、塩化カルプロニウム外用、エキシマライト照射療法や重症度によりオルミエント、リットフーロなどのJAK阻害剤で治療をおこないます。
出産後脱毛
出産後脱毛は、分娩後2〜3カ月頃から生じることが多い、休止期脱毛症の1種です。 妊娠中はホルモンの変化により、毛の成長期が延長しているのですが、出産後血中のホルモン濃度が妊娠前に戻ると毛が休止期に一斉に入っていくため、まとまった脱毛がおこります。 これは特に治療しなくても出産後6カ月ほどで自然に軽快する例がほとんどです。
牽引性脱毛
ポニーテールやおさげ髪、巻き髪をすることで脱毛を生じることがあります。 牽引性脱毛といい、長時間毛髪を強く引っ張ることにより、毛のうに炎症がおき脱毛をきたすものです。 通常は髪を引くことを止めると治りますが、この状態が長時間続くと永久脱毛となる場合がありますので注意が必要です。
トリコチロマニア
トリコチロマニアとは精神的な要因で自分で毛を抜いてしまうことを繰り返す状態のことです。 別名「抜毛癖」とも呼ばれ、小学生の女児に多くみられます。 抜いた部分が一見円形に見え、円形脱毛症と間違えられていることもありますが、円形脱毛症に比べて、脱毛部分が不規則な形で、短く引きちぎられた毛と新しい毛が、混在していることや感嘆符毛が見られないこと、また病巣部分の毛を引っ張っても簡単に抜けないことなどで鑑別します。 抜くのを止めると治りますが、改善には心理学的なアプローチが必要です。